First Last Love


「頭いいね。すっかり騙されたよ」
「お互いな」

 やっときたエレベーターに乗るよう、右手をそっちに向けて月城を誘導する。

 月城の態度が、軟化している。最初に顔を合わせた時じゃ考えられないほど打ち解けている。

対面してから憎悪を向け続けている間、罵倒(ばとう)の言葉を使った流れから敬語に戻れないのか、副社長と社員、というよりは、同級生の言葉遣いになっていた。

胸が熱くなる。

 記憶は失っていても、何年たっていても、あの頃仲が良かった月城一颯(つきしろいぶき)が戻ってきてくれたようであまりにも嬉しい。

 月城の読み通り、上部が大きなガラス窓でできているゲート隣接の管理室に人はいないようだった。

 月城はIDカードを使ってゲートを抜ける。

そこでハタと気づいた。
俺は入った記録がないから、このIDカードが使えるのかどうかわからない。管理室を通って外に出る予定だったのに、そこに人はいない。

もしIDカードを使って警報でも鳴ったら……。
IDカードを手に思案する俺に月城の声が届く。

「無理だと思うよー」

吹き抜けのゲートエリアは人がいないとさらに拡張されて見える。外からの光のせいか、ダークブルーに輝くフロアはとてつもない広さの宇宙空間を思わせた。

 そんな中で、月城はいたずらっぽい笑みを浮かべて腹の前で小さく手を振っている。

 こんな時なのに、勝ち誇った笑みなのに、それがとてつもなく可愛く感じる俺は、ドM気質にでも目覚めたんだろうか。