私たちの恋風は、春を告げる



「咲茉ちゃん、はじめまして。希海の母です。希海がご迷惑おかけして、本当にごめんなさい」


「いいえ。私も退屈してたところだったから、希海ちゃんとお話できてよかったです」


私がそう返すと、希海ちゃんのお母さんーー麗子(れいこ)さんはほっとした様に笑った。


「ほら希海、もうすぐお薬の時間だし、そろそろ病室戻るわよ」


「えー、嫌だ!まだお姉ちゃんと一緒にいる!」


「ダメよ。咲茉ちゃんにこれ以上迷惑かけるわけにいかないでしょ?」


「だってお薬苦いし…希海飲みたくない!」


「わがまま言わないの。ほら、戻るわよ」


何を言っても聞こうとしない希海ちゃんに、麗子さんは半分諦めた様にため息をつく。