「この子は希海ちゃーーー」
「あ、こら希海!また勝手に病室抜け出して!」
お母さんの後ろから姿を現した女の人の声に、私の言葉がかき消された。
「げっ!!」
顔を顰めた希海ちゃんは椅子から飛び降りると、隠れる様に私の後ろにひっついて離れない。
「げっ、じゃないわよ。また看護師さんに怒られるわよ」
「だってつまんないんだもん!」
希海ちゃんも負けじと言い返している。
お母さんが売店で仲良くなったと言って連れてきた女の人はまさかの希海ちゃんのお母さんだったらしい。
そう言われると、目元がよく似てるな…って思った。


