私たちの恋風は、春を告げる



近くの椅子に座って、足を揺らしている希海ちゃん。


「ずっとベッドにいると飽きちゃうから、時々病院の中冒険してるの。あ、ママや看護師さんには内緒だよ?」


口に人差し指を立てる希海ちゃんに、私も小さく笑って頷いた。


「少し前にこのお部屋の前通った時は誰も使ってなかったけど、今日見たらお姉ちゃんの名前あったから、どんな人が入院したのかなあって気になってたの」


「そうなんだ。……ねえ、希海ちゃんはーー」


「お待たせ咲茉。売店行ったら話の合うママさんと会って仲良くなっちゃった。それでその方が、咲茉に会いたいって……あら、その子は?」


戻って来たお母さんは、見慣れない小さな子が病室にいるのにびっくりしたのだろう。


目を丸くさせている。