私たちの恋風は、春を告げる



「それじゃあ、お大事にね」

「お世話になりました」

校門に迎えにきたお母さんの車まで保健室の先生がついてきてくれて、私は学校を早退した。

車に乗り込んだはいいけど、お母さんはなかなか発車しない。

「ごめん、仕事途中で抜けさせることになっちゃって…」

「……ねえ咲茉、病院に行きましょう」

「…病院?」

「ここ最近、今までと様子が違うなとは思ってたの。なんだかぼんやりしてることも増えたし、咲茉、元気なかったもの。今日の朝だって、顔色悪かったし、さっきの頭痛だって…意識失うくらいの痛みなんて、心配になるに決まってるでしょう?」

鏡に映るお母さんは、今にも泣きそうな顔をしていた。

泣いてるとこを一度も見たことがないくらい、いつもパワフルなお母さんだから、少しびっくりした。

「わかった……」

そんなお母さんを心配させたくなくて、静かに、私は答えるしかできなかった。