私たちの恋風は、春を告げる


「咲茉っ!良かった、目覚ましたのね!今看護師さんたち呼んでくるわ!」

涙で顔をぐしょぐしょにした女の人がどこか慌てたように飛び出していくのがわかった。

瞼が重すぎて、また閉じてしまう…そう思ったけど…

「……咲茉」

低い声で、力強く手を握られる感覚がして、私はなんとか目を閉じずに済んだ。

ゆっくり首を動かして、声のした方を見る。

今にも泣きそうなのを我慢しながら、懸命に笑顔を取り繕っている表情をした、男の人。

眠っていた時間が長すぎたせいか、目の前にいる人が誰が誰だかよく思い出せない。

「……咲茉、俺が見える?声、聞こえるか?」

誰だかよくわからないのに、その人の声を聞くたびに、泣きたい気持ちが溢れてくる。