私たちの恋風は、春を告げる



「ここから見るとこんな景色だったのね…ほとんどの時間をここで過ごしていたはずなんだけど、今初めて知ったわ。…ねえ咲茉、あなたのいる病室から、すごく綺麗な景色が見えるの。今年の桜も満開。早く目覚さないと、桜の花びら散っちゃうわよー」

おばさんは咲茉に呼びかけるように、声をかける。

それでも、何の反応を見せない咲茉に、少しだけ寂しそうに笑った。

「……あら?」

おばさんの視線が、棚の上へと向かう。

棚の上には俺が持ってきた桜の花が一房置いてある。

「これ、冬紀くんが持ってきてくれたの?」

「はい。どうしても咲茉に見せてあげたくて」

「まあ、ありがとう。きっと咲茉も喜ぶわ。…今日は外も暖かいし、少し部屋の窓開けましょうか。空気の入れ替えにもなるし、桜の匂いも咲茉に届くかもしれないから」

おばさんが窓を開けると、暖かい風と一緒に春の匂いも舞い込んできた。