私たちの恋風は、春を告げる


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少し触れれば、今にも目を覚ましそうな顔で咲茉は眠り続けている。

桐原が、ぎゅっと咲茉の手を握った。

「……あ、今、咲茉が手握り返してくれた」

俺や桐原が手を握っていると、時々、咲茉も握り返してくるような動きをすることがあった。

おばさんも最初は咲茉が手を動かしたと思ったらしいけど、医者によれば、それは咲茉の意思で動いているわけじゃなく、ただの反射らしい。

けど、時々俺たちが手を握るタイミングで咲茉も手を握り返してくることがあるから、今でもドキッとすることがある。

「そうだわ……」

そばで俺たちの様子を見ていたおばさんが、何かを思い出したように咲茉の近くにある棚の引き出しを開けた。

取り出したのは、淡い桜色の、封筒。

ひと目で、それが手紙だとわかった。