私たちの恋風は、春を告げる


咲茉の長いまつ毛を見つめながら、俺は受験の日のことを思い出した。

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あの日、受験が終わった午後、俺はすぐに咲茉の病院へと向かった。

咲茉と同じ学校に行きたくて、あいつが第一志望にしていた高校だった。

病院に着くと、桐原も受験が終わって、すぐに来たのだろう。

この時もタイミングが重なって、俺たちは咲茉の病室へ足を運んだ。

けど、咲茉のベッドはもぬけの殻で、そこにいたのおばさんひとりだった。

ドアを開けた音にはっとしたように振り返ったおばさんは、俺たちの顔を見て、今にも泣きそうな顔に、無理矢理笑顔を浮かべていた。

咲茉のいないベッドに、おばさんの表情。

俺の胸に、冷たく鋭いものが突き刺さった感覚がした。