(冬紀side) 病院の前にたたずむ桜の木が、微かではあるが春色になり始めている。 その木を見上げながら、俺は枝の隙間から差し込んでくる日の光を感じる。 と、俺の背後で止まった気配に、ゆっくりと振り返る。 「……やっほ、片岡 」 声をかけてきたのは、桐原だった。 「片岡、やっぱり今日も来てたんだ」 「…ああ」 桐原とは小学校から同じだけど、接点はあまりない。 同じクラスではあったが、会話だって大してしたことがなかった。