私たちの恋風は、春を告げる


お母さんの反応が、怖かった。

「咲茉の選択は、それでいいのね?」

「うん」

「…わかった。先生に、その話をしましょう。お母さんは、あなたの決めたことを支えるから」

お母さんは力強く言った。

「うん」

それに、私は力強く頷き返した。

大丈夫。もうくよくよしたり、迷ったりなんてしない。


✳︎

「以前にも説明したとは思いますが、手術療法となると、どんな後遺症が残るか、僕たちにも断言はできません」

主治医の先生に、手術をしたいと話をした私に対して、先生は確認するようにまっすぐな眼差しで問いかける。

「はい」

私は真剣な面持ちで頷いた。

「腫瘍を完全に取りきるのに何時間かかるかわかりません。リスクも大きいです。それでも、手術をしますか?」

「はい」

ためらうことなく、私は簡潔に返事をする。

その様子に先生も決心をしたのか、頷きを返した。

「わかりました。僕たちも、最善を尽くします」

そのあとも色んな確認を先生として、手術は3日後に行うことになった。