私たちの恋風は、春を告げる


視界が涙で揺らいでいる。

ここ最近の私、泣いてばっかりだなあ……

「勝手なことばかり言って困らせて、ごめんなさい。私、やっぱり…生きていたい」

お母さんは小さく息を吸い込んで、ぎゅっと強く、私の体を抱きしめた。

「なんで咲茉が謝るの。お母さんこそ、ごめんね…咲茉の気持ちを、ちゃんとわかってあげられなかった…」

「…ううん。お母さんがいつも一生懸命やってくれてたの、私わかってるよ」

やっぱり、お母さんの温もりは、気持ちを温かくしてくれる。

「あのね、お母さん。私、今以上に強い抗がん剤は、耐えられる自信がない…体も心も。今がもう自分にとっては限界なの。たぶん、これ以上のきつい抗がん剤治療をすれば、死にたい気持ちの方が強くなって、自分を抑えられなくなる…」

「…うん」

お母さんは、静かに頷いた。

「だからね…1回の手術に賭けたい。どんな後遺症が残るかも、目を覚ますかもわからない…でも今の自分にとって、少しでも生きる希望のある方を、私は選びたい」