私たちの恋風は、春を告げる



麗子さんは小さく頷いた。

「希海はもういない。抱きしめたいけどもう会えない…。希海のことを思い出すのはつらい気持ちでいっぱいだけど、あの子の生きた日々は絶対に忘れない。ねえ、咲茉ちゃん、これは私のわがままになっちゃうけど…本当に時々でいい。時々でいいから、希海のこと、思い出してくれると嬉しいわ…」

「時々なんて…私、希海ちゃんのこと、毎日思い出します。絶対に忘れません。…叶うかわからないけど…いつか、希海ちゃんのお墓参りに行ってもいいですか?」

「ありがとう。きっとあの子も喜ぶから」

麗子さんは穏やかな笑顔でそう言った。

「ねえ咲茉ちゃん…私は、咲茉ちゃんに幸せになって欲しいと思っているの」

「……え?」

「希海の分まで、なんて言っていいのかわからないけど、咲茉ちゃんには、大切な人たちと幸せな人生を送って欲しい。きっと、希海もそう願っているわ」

「…はい」

麗子さんにそう言われて、私は小さく答えた。




それから私と麗子さんは、希海ちゃんの思い出話を何時間もした。

二人で笑って、時々涙を流しあいながら……。