私たちの恋風は、春を告げる


「咲茉ちゃん、この間は来てくれて本当にありがとう。もっと早くに挨拶に来れたらよかったんだけど、色々バタバタしちゃって…。遅くなってごめんなさい」

麗子さんは深々と頭を下げる。

「いえ…私も、希海ちゃんと最後に会えてよかったです。私の方こそ、ありがとうございました」

お別れの機会を作ってくれた麗子さんには感謝しかない。

「つい最近退院したばかりなのにこんなことになっちゃって、びっくりしちゃったわよね」

「……はい」

「…実はね希海が咲茉ちゃんに出会った時にはもう、希海の病気は治せる見込みがないくらい進んでたの」

「…え?」

初めて知った事実に、私は驚きを隠せなかった。

「抗がん剤も効かないし、手術もできない…。ただ痛みをとってあげることしか出来なかったわ。…それでもあの子、とびっきりの笑顔で「絶対に治るんだ!」っていつも言ってたの。だから私も夫も、希海に嘘をついたわ。「大丈夫、希海はちゃんと治ってるよ」って…」

「…そうだったんですか」

私の言葉に、麗子さんは小さく頷いた。