私たちの恋風は、春を告げる



「咲茉ーーーー」

だんだんとはっきり聞こえてきた声に、私は目をゆっくりと開いた。

夢を見ていたらしい。

「咲茉」

聞き覚えのある声がして、手をぎゅっと握られている感触。

声のした方に、私はゆっくりと顔を向ける。

「……冬紀」

か細い声が、自分の喉から出たのを感じた。