美波の声は、何も入ってこなかった。
教えてくれる美波の横顔を見つめていた私の胸に、言葉にできない重い塊が沈んでいく。
「今言った流れで計算すると、答え出るはず!……咲茉?」
呆然としていた私は、美波の呼びかけにはっとする。
「あ……そ、そっか!そうやって解けばいいんだ。私全然わかんなかったから…美波、すごいね!」
「まあ、相変わらず数学苦手なんだけどね」
「でも、すごいね……」
自分が遅れているのはわかっていた。
わかっていたはずなのに、想像していた以上に自分はできてない現実を突きつけられて、私はただ呆然とするしかなかった。


