けど冬紀は違う。
受験生にとって、今が一番大切な最後の追い込みの時期。
人生の中でも大きな分岐点に差し掛かっている冬紀を、邪魔したくない。
「冬紀が今考えなきゃいけないのは私のことじゃなくて、冬紀自身のこと。受験、もうすぐなんでしょ?だから、今は目の前のことだけに集中してほしい」
「…俺を誰だと思ってる。勉強なんて、全部頭に入ってるに決まってんだろ。俺は天才だぞ…」
「ふふっ。冬紀が天才なことくらい、わかってるよ。でもさ、ここ病院だよ?一番大事な時期に風邪とか感染症とか、移ってもおかしくないもん。だから、来ないほうがいい。ほら、よく言うじゃん?バカは風邪ひかないって。だから逆を言えば天才な冬紀は、すぐ風邪ひいちゃうってこと」
冬紀はまた泣きそうに顔を歪めて、ぎゅっと拳を握っている。
私はそんな冬紀を見ながら、言葉を続ける。


