私は喘息が怖くて眠れず、お手洗いの為に部屋から出るとリビングから光がもれている


今は23時と遅めの時間だから誰もいないはず

足音をなるべくたてずに近づくとカナトさんが本を読んでいる

やばい…

目があってしまった

「喘息が怖くて眠れないのか?」

「えっ……」

気付いてたの?

「今日もクリニックに来なかったから医院長が心配してた」

「……」

「吸入はしたか?」

「……」

下を向いて無言貫く

吸入もサボるようになってしまった

一応持ち歩いてはいる

「怒らないからここにおいで」

リビングに入り、カナトさんが座っていた椅子の隣に座るようにいわれ、座った

「怒らないから正直に答えて」

「はい…」

「吸入は毎日してた?」

首をよこにふる

「そうか…ここで待ってきて」

カナトさんはリビングから出ると聴診器を持ってきた

椅子の向きをかえ、向かい合う形になりまるでこれから診察されるみたいだ

「耳にかけて」

聴診器を渡され耳にかける

どうして??

「服を少しめくって」

言われるまま少しだけ服を捲くと、カナトさんは服の下から手を入れて、胸に当たる丸い部分を私の胸にあててくると、

ゼーゼーのような音がする

初めて自分の胸の音を聞いた

「この音を覚えて」

首をたてにふる

次にカナトさんは自分の胸に当たると、私と全く違う音がする


「違うだろ?」

「はい…」

聴診器を耳から外し渡すと、次はカナトさんが耳にかけた

「さっきのように服をめくって」

私は少しだけ捲ると、服の下から手が入ってきて胸の音を聞いている

「戻していいよ」

カナトさんは聴診器を肩にかけ、私の目をみてくる

「…」

「吸入機は持ってきてるのか?」

「はい」

「ここに持ってきて」

私は吸入機を持ってくると、カナトさんに渡した

「今日から毎日していこうな」

「…」

吸入機を使えるように準備してくれている

「急がなくていいから心の準備ができたらやろうな」

渡される

「はい…」

味が嫌いだし、咳き込んでしまうから苦手だ

「ユリとは仲いいのか?」

「えっ、、はい」

「これからも仲良くしてやって」

本当のお父さんみたいだ

「はい…」

「一人で通院するのが心細かったら、サクラと一緒に通院する?サクラも喘息持ちだからな」

「サクラさんも?!」

「あぁ、サクラは数年間サボっていたから少し似てるな」

「私よりも…」

「そうだな」

カナトさんが少し笑っている

カナトさんが笑うところを初めてみた

「サクラさんが頑張っているから私も頑張ります…」

「偉いな、辛かった医院長に吐けばいいよ。我慢するな、いいな?」

「はい…っ」

涙が出てしまった

私は吸入機を使うと背中をさすってくれた

「サクラは、手に持ってから使うのに1時間かかることもあるからナナちゃんの方が大人だな」

また、笑っている

サクラさんのことが好きなんだなぁ


それから私はサボるずに通院するようになった

カナトさんはクリニックで会うたびに褒めてくれるので嬉しい