最強男子はあの子に甘い

「だ、誰か来たらっ……」
 
 彗くんのきれいな顔が迫ってくると、緊張のあまり私はまた彼にささやかな抵抗をしてしまう。
 無駄だとわかっていてもだ。
 彼はそんな私の反応をも楽しみ、微笑む。
 余裕があるように見えて羨ましいほど。

「俺は誰の前でも紗宇にキス出来るよ?」
「え……!?」
「でも……恥ずかしがったり照れたりする紗宇は、かわいすぎて誰にも見せたくない」

 これは世に言う独占欲というやつだろうか。
 彗くんが私に甘くて、甘すぎて、心が追いつかない。
 心臓の音がどんどんボリュームを上げて体中に響いていく気がした。

 彗くんは私を離すと屋上の扉へと手を伸ばして、その扉に鍵をかける。
 カチッと、扉に鍵のかかる小さな音が私の耳にも届いた。

 そして、ズボンのポケットの中から『屋上』とラベリングされたキーホルダーつきの鍵をひとつ。
 取り出した手のひらに乗せて私に見せると、静かに握ってポケットへとそれを戻した。
 屋上に校内から入る手段も、彼の手の中だ。