最強男子はあの子に甘い

 あぁ……彗くんから引っ越すと聞いたときの私は、そうか、泣くのをこらえていたんだ。

 彗くんにはもう会えなくなることも、彼が遠い存在になってしまうことも、寂しくて、悲しくて。
 私はその気持ちを言葉にこそ出来なかったけれど、彗くんに伝えたかったのだろう。
 そしてそんな私の気持ちを、表情ひとつでわかってくれていた彼はやっぱり優しいひとだ。

「彗くん、公園で助けてくれてありがとう。……昔も、今日も」
「俺の目の届かないところで、危ないことしないようにな?」
「はい……」

 彼のセリフに愛を感じて、私は反省しつつもはにかみながら答えた。
 でも、どこで何があっても、私がピンチのときに彗くんは、飛んで来てくれるような気がする。
 私にとっては昔も、今も、これからだって、彗くんは強くて優しいヒーローだ。