最強男子はあの子に甘い

「で、では!私は玉子を買って帰らなくてはいけないのでこれで!お騒がせしました!」
「紗宇、俺も付き合う」

 彗くんがそう言って公園から去ろうとした私の手を掴んだ。
 不意に触れられ、伝わって来るぬくもりから屋上で一緒に過ごした記憶が再び一気に蘇ってきて顔がカーッと熱くなる。
 
「後のことは僕が引き受けますので、ごゆっくり」
「悪いな、乙部。助かる」

 乙部さんの言う『ごゆっくり』が、意味深に聞こえた気がする。
 気のせいだろうか。

 ……いやいや、考えすぎだ。
 
 私の手を引いて彗くんが歩き出すと、好きな人と手を繋いで歩くということだけで照れてしまう私には、きっと思考に余裕がないのだろう。