最強男子はあの子に甘い

「やっぱりぃ~……!紗宇ちゃんが出て来るなんて、聞いてないこと起こるんだもん!もぉ〜……疲れたぁ!」

 乙部さんの言葉を聞いた姫が大きな声でぼやきながら、へなへなと膝を抱えてその場にしゃがみ込む。
 私は何のことかわからずに、みんなをキョロキョロと見渡した。
 すると彗くんがそんな私を見てふっとふき出し笑いながら頭を撫でる。

「怖い思いさせてごめんな?」
「彗くん!笑いごとじゃないし!それ、私に言うほうが先だし!」
 
 ふくれっ面で彗くんに文句を言う姫は、他校のヤンキーたちよりも強く見える。
 いや、実際に強いところを目撃済みだ。
 
「ごめんな、蜜姫。それから……今日はありがとな?」

 姫に微笑みかけ彗くんがそれだけ伝えると、姫は照れを隠すように口を尖らせてそっぽを向いた。

「小坂さんが駅前で他校生に捕まるように、僕らは仕向けてたんですよ」
「え……?」
「まあ……おおよそ、相手の動きと戦力はすべて読み通りだったんで、無傷で済んで良かったですけど」
「……つまり、私は……作戦の邪魔を……」

 それとなく事情を説明してくれた乙部さんに恐る恐る訊ねると、何も言わずににっこりと微笑まれた。
 なんて怖い笑みなのだろうと思い震える。