最強男子はあの子に甘い

　総力戦とも呼べる数の桜辰生が、他校のヤンキーをさらに囲い込んでいたのだ。

　ただそれだけで私たちを囲んでいた他校の寄せ集めヤンキーたちは、次々に散り散りに逃げて行く。
　囲い込んだ桜辰生たちは手を出していないのに、その存在だけで圧倒したのだ。圧巻である。

「さあ、やるか？」
　
　彗くんが残ったヤンキー四人に声をかけると、四人はみんな首を横に振って倒れていた二人を引きずりながら逃げて行った。
　囲い込んでくれた桜辰生の中から、いつ見ても目立つシルバーヘアーの永田くんがこちらへと駆け寄って来る。
　そして私を見つけると不思議そうに口を開いた。
　
「紗宇にも声かけてたんすか？」
「いえ、榎本さんの登場は事故ですね」

　乙部さんはふうっと息を吐いて、私を見た。