最強男子はあの子に甘い

『手段を選ばずに何か仕掛けてくる気がしています』
 
 乙部さんの予想が頭を過る。
 彼らは一体、何を考えているのだろうか。
 私には想像がつかない。
 だからこそ少しだけ怖い。
 そんな私のそばには彗くんと、乙部さん、それに男を投げ飛ばせる姫がいる。
 クズなヤンキーに負ける気はしない。
 でももしも彼らにもっと仲間がいたなら?囲まれてしまったら?
 
(私……確実に、足手まといだ……)
 
 残念ながらケンカに使えるような技を持っていなければ、パワーはここにいる誰よりも劣る。
 いやしかし、ナイフを突きつけられていた時点で私は足を引っ張っていたのだから今さらだ。
 こんなときに落ち込むのはよそう。
 余計に足手まといになってしまいかねない。

 ドクンドクン……と、心臓が大きく音立てる。

 笑みを浮かべていたヤンキーの一人が、ゆっくりと手を上げ人差し指を立て空に向けた。
 すると一人、また一人と公園の周りに様々な学校の制服姿のヤンキーたちがどこからともなく次々に姿を現し、私たちを囲み始める。
 乙部さんの竹刀がかわいく思えるような武器を持つ者も目に入った。
 私が怯えると、察した彗くんがぎゅっと肩を強く抱いてくれる。