「校内だけじゃなくて、桜辰トップって外でもかなり広いエリアで影響力があるんだ。でも外では無闇に力を振りかざさないのが桜辰の流儀で、桜辰の生徒同士が拳で語り合うことはあっても他校生にケンカを売るのはご法度。だから他校生も桜辰にケンカを売らないのが暗黙のルールなんだけど……」
知っていることを話してくれたあと、湯川くんは「うーん……」と唸りながら考え込んで視線を下へと落とす。
私が桜辰の近くに住んでいても、治安が悪いと感じたことがないのも納得だ。
むしろ守られていたのかもしれない。
けれど、湯川くんが考え込んでしまうくらい今はその『暗黙のルール』が破られていることに私も思わず「うーん……」と唸った。
「まあ、難しいことはわかんねぇけど井原さんは負けねぇし」
私と湯川くんが唸っているそばで、永田くんがさくっと重苦しい空気を蹴とばしてくれる。
「そうだよね!永田くんも負けなかったしね!」
「勝ったって言えよ!」
笑顔を見せた湯川の頭を叩いて彼の発言を修正する永田くんとのやりとりも、笑えるようになると平和を取り戻したように感じた。
問題が解決したわけではないけど、外野が深刻に悩んでも仕方がない。
「仲がいいですね」
一年生の私たちに声をかけて来たのは、二年トップの乙部さんだった。
知っていることを話してくれたあと、湯川くんは「うーん……」と唸りながら考え込んで視線を下へと落とす。
私が桜辰の近くに住んでいても、治安が悪いと感じたことがないのも納得だ。
むしろ守られていたのかもしれない。
けれど、湯川くんが考え込んでしまうくらい今はその『暗黙のルール』が破られていることに私も思わず「うーん……」と唸った。
「まあ、難しいことはわかんねぇけど井原さんは負けねぇし」
私と湯川くんが唸っているそばで、永田くんがさくっと重苦しい空気を蹴とばしてくれる。
「そうだよね!永田くんも負けなかったしね!」
「勝ったって言えよ!」
笑顔を見せた湯川の頭を叩いて彼の発言を修正する永田くんとのやりとりも、笑えるようになると平和を取り戻したように感じた。
問題が解決したわけではないけど、外野が深刻に悩んでも仕方がない。
「仲がいいですね」
一年生の私たちに声をかけて来たのは、二年トップの乙部さんだった。



