最強男子はあの子に甘い

「送ってくって!紗宇!」
「一緒に歩いてたほうが目立つからいいよ!」
「一人のときに何かあったらどうすんだよ!」

 放課後の教室では一人で帰ると主張する私と、何が何でも私を家へと送り届けると主張する永田くんが揉めているのを、湯川くんがどちらにつけば良いものかと困惑しているトライアングルが出来ていた。
 
「登校は問題なかった!」
「それは俺がケンカ売られたことで、上級生が見回りして警戒してくれてたからだっての!」
「……え、そうなの?」

 全力で引っ張り合ってた綱をパッと手放すように私が驚くと、永田くんと湯川くんが一気に脱力しコケた。

「五人で一人囲んでくるような奴らだし、紗宇はもちろん、たけるみたいに平和そうなのが狙われないとも言えねぇしな」
「彗くんと対決したいわけじゃないのかな……」

 湯川くんが不思議そうに首をかしげて呟く。
 
「俺と違って正面から井原さんと一人でやり合おうとするほど強くはねぇーな」
「ずるいよね。きっとどんな手を使ってでも彗くんを負かす気なんだ」
「他校生がそんなことしても桜辰トップになれるわけでもないのに?」

 今度は私が不思議に思って呟くと、湯川くんが丁寧な解説をはじめてくれた。