最強男子はあの子に甘い

「……悪かったな、屋上すすめて」

　学校を出てすぐ、永田くんは小さな声で私に謝った。
　湯川くんに言われてた『反省の色』が出すぎていて心配になるくらい、らしくない。

「ううん。いずれはわかることだったから」
「え？もしかしてマジでフラれたの？」
「桜辰のお姫様と彗くんの仲を邪魔するほど、空気を読めない女にはなりたくないというか」
「姫と井原さん？あー……確かに、一緒にいること多いけどな。同じクラスだからじゃねーの？」

　家まで案内するように私が進む道を、わずかに遅れて永田くんも一緒に歩いてくれる。
　その道のりの会話でそれとなく姫について触れると、一年トップとして彗くんに近い存在の一人である永田くんは、意外にも二人の仲をクラスメイトで片づけた。
　友達以上恋人未満というやつなのか、交際していても隠しているのか。
　そういえば校内でも今のところ彗くんと姫の関係については、私が思っているような仲だとは聞いたことがない。