「あの!……入学式ではありがとうございました!」
「ああ……紗宇は昔も今も、強いのか弱いのかわかんないよね。桜辰を進学先に選ぶあたり変わんないなぁと思ってた」
「え……彗くん、私のこと覚えて……」
「覚えてるよ、俺のこと怖がらない子だったから。かと言って強いわけでもなくて。紗宇のほうこそ俺のこと覚えてるんだ」
「彗くんのこと、私には忘れるなんて出来ないです……」
「俺、そんな風に覚えていてもらえるほど紗宇に何かしてあげた覚えはないけどね」
ふっと笑って、彗くんは不思議そうに言った。
けれど彗くんが思うよりずっと、私は彼に優しくしてもらったことを覚えている。
私のほうこそ彗くんに覚えていてもらえるほど目立つような顔立ちでもないし、何かしてあげられた覚えもない。
それなのに彗くんが覚えていてくれたことが私にとっては不思議だ。
「紗宇は屋上が立ち入り禁止って聞かなかった?」
「……聞きました。その分、静かだよって友達が教えてくれて」
「友達?」
「永田くん、です」
「圭音か。それは叱っておく」
「あ!でも立ち入り禁止なのに好奇心で侵入したのは私で……」
「ここがどうして立ち入り禁止か知ってる?」
「知らないです」
「俺のテリトリーだから。圭音はそれを知った上で紗宇に屋上をすすめたってこと。……何を考えてるんだか」
彗くんは怒るというよりも、永田くんのことを面白がっているように見えた。
私は教室でお昼を食べていたときの会話を思い出す。
すると永田くんがわざと私と彗くんが鉢合わせになることを狙ったとしか思えなかった。
きっと永田くんは永田くんで、私が彗くんを意識していることを知って面白がっていたに違いない。
「ああ……紗宇は昔も今も、強いのか弱いのかわかんないよね。桜辰を進学先に選ぶあたり変わんないなぁと思ってた」
「え……彗くん、私のこと覚えて……」
「覚えてるよ、俺のこと怖がらない子だったから。かと言って強いわけでもなくて。紗宇のほうこそ俺のこと覚えてるんだ」
「彗くんのこと、私には忘れるなんて出来ないです……」
「俺、そんな風に覚えていてもらえるほど紗宇に何かしてあげた覚えはないけどね」
ふっと笑って、彗くんは不思議そうに言った。
けれど彗くんが思うよりずっと、私は彼に優しくしてもらったことを覚えている。
私のほうこそ彗くんに覚えていてもらえるほど目立つような顔立ちでもないし、何かしてあげられた覚えもない。
それなのに彗くんが覚えていてくれたことが私にとっては不思議だ。
「紗宇は屋上が立ち入り禁止って聞かなかった?」
「……聞きました。その分、静かだよって友達が教えてくれて」
「友達?」
「永田くん、です」
「圭音か。それは叱っておく」
「あ!でも立ち入り禁止なのに好奇心で侵入したのは私で……」
「ここがどうして立ち入り禁止か知ってる?」
「知らないです」
「俺のテリトリーだから。圭音はそれを知った上で紗宇に屋上をすすめたってこと。……何を考えてるんだか」
彗くんは怒るというよりも、永田くんのことを面白がっているように見えた。
私は教室でお昼を食べていたときの会話を思い出す。
すると永田くんがわざと私と彗くんが鉢合わせになることを狙ったとしか思えなかった。
きっと永田くんは永田くんで、私が彗くんを意識していることを知って面白がっていたに違いない。



