湯川くんと彗くんの出会いが、私と彗くんの出会いに似ているとふと思った。
私と彗くんには友達と呼べるほどの付き合いは生まれなかったけど。
いじめっ子から助けてくれたあの日。
泣いていた私が泣き止むまでそばにいてくれた彗くんは後日、誰が見ていたものか『六年の井原彗が四年の榎本紗宇を泣かせていた』と噂されることになる。
私はそれを知ったときびっくりしてしまって、一生懸命『彗くんに助けてもらったこと』と『彗くんにとても優しくしてもらったこと』を周囲に話して回ったものだ。
すると今度は『井原彗と榎本紗宇は付き合っている』なんて、小学生らしい短絡的なノリで噂になってからかわれる。
私はそのことをどうにか彗くんに謝ろうとしたことがあるけど、校内を探して彗くんと会えたときには、彼は何も気にしていないと言った様子で私を気遣い逆に謝られてしまった。
そして彗くんが卒業後に引っ越すことを聞き、『中学も違うし、噂なんてみんなすぐ飽きて消えるよ』と笑ってくれた優しい顔がなぜか忘れられない。
私はそのときどんな顔をして彗くんの話を聞いていただろうか。
彗くんとは会えなくなると思うと寂しくて、胸がきゅっと締めつけられたことは思い出せるのに――。
私と彗くんには友達と呼べるほどの付き合いは生まれなかったけど。
いじめっ子から助けてくれたあの日。
泣いていた私が泣き止むまでそばにいてくれた彗くんは後日、誰が見ていたものか『六年の井原彗が四年の榎本紗宇を泣かせていた』と噂されることになる。
私はそれを知ったときびっくりしてしまって、一生懸命『彗くんに助けてもらったこと』と『彗くんにとても優しくしてもらったこと』を周囲に話して回ったものだ。
すると今度は『井原彗と榎本紗宇は付き合っている』なんて、小学生らしい短絡的なノリで噂になってからかわれる。
私はそのことをどうにか彗くんに謝ろうとしたことがあるけど、校内を探して彗くんと会えたときには、彼は何も気にしていないと言った様子で私を気遣い逆に謝られてしまった。
そして彗くんが卒業後に引っ越すことを聞き、『中学も違うし、噂なんてみんなすぐ飽きて消えるよ』と笑ってくれた優しい顔がなぜか忘れられない。
私はそのときどんな顔をして彗くんの話を聞いていただろうか。
彗くんとは会えなくなると思うと寂しくて、胸がきゅっと締めつけられたことは思い出せるのに――。



