最強男子はあの子に甘い

 湯川くんはイケメンである。
 目立つタイプではないけれど、振る舞いがもうイケメンである。
 彼女がいるというのも納得するばかりだ。
 私が湯川くんのフォローにときめく隣で、永田くんはつまらなさそうに惣菜パンをかじっている。

 なんだかんだ、こうしていつも三人でお昼を囲むくらいには仲良しグループのようになりつつあった。
 永田くんは乙部さんから私のことを託されているらしく、嫌でもそばにいてくれているのかもしれない。
 責任感が強いのか、乙部さんが怖いのか。

「そういえば、紗宇はなんで桜辰?」
「家が近いから」
「……は?そんだけ?」
「それだけ」
「ある意味すげぇつえーな……」
「湯川くんは憧れてる人がいるからって言ってたよね?」
「そう!彗くん!」
「たけるさぁ……井原さんの呼び方、馴れ馴れしくね?友達じゃあるまいし」
「友達だよ?」

「は?」
「え?」

 永田くんと私がポカンと口を開けて驚くのを他所に、湯川くんは相変わらずにこにこと平和そうな表情だ。

「僕が中学のとき高校生に絡まれて。絶体絶命!って思ったら彗くんが現れて助けてくれたんだ。それから仲良し!そして僕の憧れ!」