最強男子はあの子に甘い

「二年の乙部さんに紗宇のことよろしくって言われててさ。そこそこかわいいし、彼女だったら守り甲斐あるし」

 早速、長年の付き合いですみたいに名前を呼ばれた上、そこそこという評価を下され、付き合ってやってもいいみたいな彼の態度に思わず「はあ!?」と私は大きく声を上げてしまった。
 ケンカを買ったかのような私の怒りを含んだその声に、湯川くんがポカンとしている。

「かわいい……」

 しかし当の永田くんはと言えば、そんな私にときめいてしまったらしい。
 私には男の子がよくわからない。

「永田くん、紗宇ちゃん困ってるから」

 湯川くんが紳士的な合いの手を入れてくれて、私には彼が再び天使のように見えた。
 
「あ?お前、誰?紗宇のこと好きなの?」
「僕は湯川たける。紗宇ちゃんとは友達になったばかりで……」
「あわよくば付き合おうと?」
「いや僕、彼女がいるから」

 さらりと彼女がいると答えた湯川くんに対して、永田くんがフリーズした気配を隣に感じる。
 湯川くんは出会ったときから接しやすく感じていたけれど、彼には大切な彼女がいて、声をかけてくれたことが純粋にうれしかったのも、下心を感じなかったからだろうかと私は妙に納得してしまった。

 しかし、永田くんは湯川くんの座る椅子を蹴って「お前とは仲良くしねぇし!」と言い放つ。
 明らかに湯川くんに悪いところがあるのではなく、彼女がいることに対して嫉妬しているようだった。
 拗ねて机に突っ伏した永田くんから大きなため息がこぼれるのを聞いた私と湯川くんは、顔を見合わせて微笑む。意外と悪い人でもなさそうだ。