「じゃあ……もう恋の神様に賭けるしかないね」
「……へ?」
「ロンドンの学園の近くにね………海があるんだ。夏近くなると、恋を実らせてくれる神様がいるんだって。名前は「Summer Love」。僕は………もう、それに賭けようと思う」
「……どうゆことなの…?」
「来年の夏らへんに……考えておいてほしいんだ」
零くんが言わんとしていることが、やっと理解できた。
「でも……嫌なんじゃないの?その……遊ばれるの………?」
「実は、それを承知の上で………付き合ってるんだよ?知ってた?」
優しく微笑み、零くんは私の手を握る。
「でも………恋の神様「Summer Love」は意地悪で……気まぐれだから……どうなるのかはわからないっていうのが難点だね」
「その決断を……下すのは……私だよね……?」
「だけど………僕は賭けてみたいんだ。本気で愛している人間が、どれだけ説明できない理不尽に耐えられるかっていう僕の挑戦って言ったら変だけど。でも………僕は……それでも純奈の事がーー」
最後の二文字は、覚えていなかった。
思えばあれが最初で、最後の愛の告白だったのかもしれない。
「もう別れたんだよ………零くんとは」
現在に至り、百合ちゃんに優しく微笑んだ。
あの日ネックレスの事問い詰められて、喧嘩別れした真夏日の夜。
零くんは私に「婚約をもう一度真剣に考えてほしい」って。
「さっきの事は無いことにして、真剣に僕と付き合って欲しいんだ」って言われた。
だけれども、私は耐えられなかった。


