一番知りたかった、きっと私自身が欲しかった答えを自身の言葉で遮ったのはいつぶりだろう。
「やめて………、私………耐えられない………」
いざとなると零くんが自分の物になるのが、怖くてその言葉を………受け止めきれないこの様子。
なんて私は弱い人間なのだろう。
私はガラスのハートどころか、ガラスそのもので出来てる人の形をした物質なんじゃないかって。
「………なら、聞こう。そんなに、愛の言葉が欲しいと望んでいるはずなのに、どうしてーーー婚約を結んでくれたんだい?……おかしいじゃないか」
「それは……」
唇が切れ、ピリピリする。
レモン鍋の汁が薄っすらと傷口にしみる。
「………零くんを通して………遊びたかったの」
もちろん違う。
真っ赤な嘘だ。
「零くんを通して、修先生を誑かせばーーー何か起こるかなーとか、楽しいことが起こるかもしれないって………」
本当は違う。
どうして婚約を急いだか。
それは……いつか、さっき言ったみたいな「言葉」を零くんにぶつける為だ。
その為に、私は零くんとわざと付き合って婚約を約束したのだ。
それは……「私の物にならないように、零くんの心をへし折る為」に。


