「………分かってやってくれ。お父さんの事は死んでも許さなくてもいい。だが隼斗はお前のことを、思って踏み込まなかったって俺は思う」
「ねぇ、修っち……どうしたら、隼斗の事を許せるのかな………?」
「それは……お前が考えなきゃいけないことだ」
「私が………か」
「長い時間はきっとかかるとは思うけど………隼斗はお前の為を思っての今の立ち位置だったりすると俺は思う。分かってやってくれ」
「そうなのかな………でも、そうだって私も信じたいな………」
さざ波の音がやっと聞こえた。
柔らかな夕日が室内を優しく包みこんだ。
「私………もう、修っちの事………諦める」
「本当か?」
「何いってんの?ゆっくりに決まってる。そんなの………すぐには無理だよ」
「でも、いつでも困った時は、俺を頼ってくれよ?」
「そんな事言われちゃうと、余計辛くなっちゃうのに………修っちの意地悪!!」
「お前への仕返しだ。これまでの、俺へのお節介もセットでな」
しばらく俺達は他愛もない話をした後。
「じゃあな、友香。また明日」
「うん。じゃあね」
そう言葉をかわした瞬間、俺はなぜだか寂しさを感じた。
理由はわからない。
成長を見届けられたから故なのかは、存じ上げないが目線を上げると隼斗がいて。
俺は肩に手を乗せて、隼斗に「後は、頼む」としっかり目を見て伝えて。
そして去り際に隼斗が「修先生も、逃げないでくれよ?ありがとう」と話せたのは、絆があったからなのだろうか。
終わりの始まりが交錯したこのホテルで、またもや厄介な出来事が起ころうとした事に俺は気付かなくてーーー。
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