Summer Love



全くもって、話が読めない。


この人のいう、修っちの秘密ってなんなの?



純奈先輩と、修っちがどう関係してるって事なの?



「それに貴方、さっきから反抗しているけど……そんな事、呟いている場合なのかしら?」



「どうゆうこと……?」



「貴方、野球部の大事な試合シーズンだっていうのにズルして幼馴染くんと、サボっているみたいじゃない?」



「その情報も、大人の悪知恵ですか?」



「正解」



私のティーカップと花子さんのティーカップをわざとらしくぶつけて、乾杯する姿。


煽ってるのだ。



この人は私を。



「サボってなんていません。ちゃんと、監督に許可を取って、休暇をもらったんです」



「許可ね………。大事な甲子園を控えた部活を捨てて、バカンスで遊び呆けてる状況を、監督がどう捉えてしまうのか………考えたことあるかしら?」




その言葉を聞いた瞬間、私の中の何かがプツリと切れた。



思わず、花子さんの襟を掴んでいたのは一瞬の事で。



「修っちの関係は………遊びじゃない!!バカンスをズル休みをして、楽しもうとしている魂胆で………私はここに来てない!!」



カラカラと音を立てて、私のティーカップが転がった。



飛び出した液体は、床にこぼれ落ちカーペットを染めてゆく。


「あらあら、短気なお嬢さんね」


私の手首を掴んで、花子さんは私の手を突き放す。



「監督に連絡してみたの。情報だけは追うの私、得意だから。言ってたわよーー「アイツは、大学推薦を舐め腐ってる。こんな時期に、チームの事を考えずに遊びに出るなんて」ですって」



「……それは」



ぐうの音も出ない、正論だった。



私は確かにチームの事を優先せずに、修っちの事を先回しにしたーーこの事実は変えようもない。



「だから、監督言ってたわよ?「アイツを大学推薦を取りやめさせるようにする」って。ついでに、その幼馴染くんも同様ですって」



「そんな……でも、今までチームメイトを育ててきたのは、私と隼人です!!こうゆう時のために、必死で全国大会まで出れるように育ててきたのは、私達二人のおかげでもあるのに……嘘ですよね?監督は流石に、その事を良く知っているはず……」


「でも、貴方後輩の事を視野に入れて考えてなかったようね?マネージャーの後輩よ?」



胸を突き刺されたように、その言葉は抉る。



「後輩ちゃん達が、貴方の卑しい心を見透かしていたみたいよ?「みーんな友香先輩が必死なの見え透いてるのに、頑張ってるの馬鹿みたいだよねー」ですって。噂してたみたい。残酷よね。幼馴染くんとずっとくっついてるから、言われる要素もあるんでしょうね。監督もこの件で、あなたの事を、マネージャーから外すって言ってたわ」



追い打ちをかけるように、手紙を差し出された。



心臓が口から飛び出しそうになったが、何とか耐え袋を開ける。


それは監督から直筆の手紙と「退部届け」が。


これは間違いなく、監督本人の文字。


そして、「もう、部活に来ないでくれ」とはっきり書かれていた。


「こんな………許されることじゃない!!脅しだわ!!監督と貴方がやっていることは、犯罪よ!!」



机をバンッと鳴らして、花子さんにかがみ込んだ。


「でもーー協力的にならなかったのは事実だし、海の家にノコノコやって来てるのは利己心的な「修先生に気に入られたい」って下心満載の理由だから、偉そうに言える立場ではないじゃない?」



花子さんの言っていることが、今頃になって正しすぎて、目眩がしそうだ。



「あーあ。これじゃあ、大学行けそうにないわね?」




「どうしてそんな事がわかるんですか?」



「貴方こそ、どうしてか一番わかっているくせに」



「なんなの……?なんなんですか?」




「お父さんが、捕まっているものね」



雷鳴轟く。



それだけは言われたくない言葉だった。



目の前にいる、この女は私のあの事を隅々まで知っているからこそ近寄っているのか?



あぁ、手が出そう。



ぐっと掌を、掴んだ。


「お父さんに、犯されたーーーそうでしょ?ずっと前からも」