Summer Love


「死んだわ。娘と婿は」


「え?」



「交通事故だったのよ」



「……交通事故とは?」




「純奈の誕生日当日に、娘と婿は重要な仕事があって、急いで仕事を終わらせてプレゼントを雑貨屋さんで買ったの。前々から、純奈が欲しいと願っていた雑貨屋さんにあるぬいぐるみを。それが白いうさぎのぬいぐるみ」




ソファーにちょこんと座る「それ」は俺の全てを見透かしているようでーーー目を逸らした。



「仕事を急いで終わらせて、指定時間にまにあおうとした。でもプレゼントを考えて買った時間も含めて、純奈の約束の時間に厳しい状況で。だから2人は、横断歩道をいそいで近道だと焦って渡ったら、赤信号。運悪く車に轢かれ死んだわ。2人ともね」


いたたまれなくなって、目線を落とす。



ーーそんな過去があったなんて……。



殻になった花子さんティーカップに、アールグレイが注がれる。



アールグレイに写る花子さんの顔は、どんな顔をしてるのかは、歪んで分からない。



俺はなんと返答すればいいんだ……。


「だから、純奈はあの事を後悔してるの。誕生日パーティーを開くって意気込んでいた事を。葬式の時に親戚の前で「私がお父さんとお母さんを殺したんだっ!!!」て取り乱してた。悪いのは、純奈ではなくあのバカ娘と婿なんだけどね。純奈は自分が我儘をいえば、他人が傷つくって思い込んでる。だから、今おかしなことになってる可能性はあるわ」