「純奈はまだ、小学生のころだった」
過去の入り口として、やっと語り始めた。
その様子を見逃さず、俺は聞き入る。
「毎年、あのお馬鹿夫婦……いや、私の娘は純奈の誕生日を祝ってあげない不器用さんだったわ。もちろん、純奈の事は、娘と婿は愛していたけれど、何かと面と向かって愛情表現するのが下手くそだった。だからこそ仕事で忙しくして、月に1回顔を見せるだけ。そんな生活を純奈はあの日まで送ってた」
ため息を吐く花子さん。
「でもね、そんな様子でも純奈は娘と婿を嫌いになることはなかった。仕事で頑張っていることは、身を持って分かってたから。賢い子だったからね。でも、ある日月に1回しか会えない事に耐えられなくなったのか、純奈は口走ってしまったの。「今週の誕生日に、一緒にパーティーをして祝ってほしい」って」
外の様子が暗くなってきた。
小雨が降り出し、海も荒れる。
「でも、そう発言した日は月に一度皆で集まる「HappyDay」だった。娘と婿は困り果ててしまった。仕事で忙しくて構ってられないし、プレゼントもどんなのがいいか悩んでいて用意もできてない。その場に居合わせた2人を、私はこっそり叱ったのは覚えてる」
「それで、どうなったんです?」


