差し出された手。
ベージュ色のマニキュアが、ニスを塗っているかのように光っている。
「よ……よろしくお願いします」
渋々握手。
案の定、強く握られヒリヒリ痛みが走る。
顔には出さないが。
「純奈の件は申し訳ありませんでした」
「あらあら、どうして謝るの?」
ビリビリと痛みが増す。
花子さんの眉間がつり上がっている。
必死に笑顔を取り繕っているがーーー今にも崩れそうだ。
「えっと……うっ……いっつ!!えー、その、私の配慮不足で、仲たがいを起こしてしまったことです」
「あらあら、そうだったのね。ほーんとうに残念」
やっと手を離してくれた。
これを言わせたかったのか?
はっきりぶつけてくればいいのに。
親子ともども、遠回し癖があると厄介な物だ。
「でも、私も疑問に思うことがあるんです」
聞きたいことは、山程ある。
だが、要件は簡単に済ませたい。
「仲たがいの原因に、純奈さんの過去が関係しているみたいなんです」
花子さんは、黙って見つめ紅茶をすする。
「やっぱり安物のアールグレイって、美味しくないのね」
嫌味を吹き込まれたような気もしたが、気にせず問う。
「純奈さんの過去に、何があったんです?」
花子さんは、高級茶菓子のクッキーをひとつまみ口に入れ、また紅茶を飲む。
が、一気に飲み干してカタリと音を上品に皿に乗せた。


