ーー「そうかも知れない……でも、僕はもしそれで傷ついている生徒を優しく包み込んで勇気を与える先生にそれでもならなければいけないって思うんだ」
ーー「どうやって?」
ーー「もしも自分があの「生徒」だったらどう思うだろうってよく考えるんだよ」
時は戻り、目を開ける。
真っ青な空が飛び込み、眩しい水しぶきが視界を刺す。
ーーもしも、もしも俺が「純奈」という立場だったら……どうしていた?
引っ込み思案で、大人しいタイプの純奈。
それは俺が見た所、紛れもない事実だ。
ーーー「怖いの………誰かを愛したら、その人が消えちゃうんじゃないかって」
彼女はそう、以前からずっと口にしていた。
そう考えれば、過去にきっと何か辛い拒絶したくなるような仕打ちを受けたと考えたら………。
「過去はどうゆう対応なのか分からないが、彼女は自分の事で手一杯で、相手がどう思うのかってのを冷静に対処できない………。告白を俺にしなかった事が、唯一の気遣い………。そんなところか………」
口にしてみたけれど……やっぱり、純奈は学校に来た当初からとてもじゃないけど、とてつもない闇を持っているのかもしれない。
どんな闇かは存じ上げないが、それでも彼女は彼女なりに気遣ったところもある。
それは、俺に告白せずに「変な噂」が立たないような気遣いはあったのかもしれない。
性格からして。
そしてそんな闇を抱えている純奈を、俺は見ようともせずに理解しろと話を進めようと悪足掻きしたのはよくなかったのかもしれない。
だって、そんな精神状態で冷静になれる余裕は、大人でも持つことは難しいのだから。
「……やっぱり、謝るべきだな………」
そんな生徒を追い詰めていたんだとしたら、生徒のことを思いやれていたとは言い難い。
風になびく白いワンピース姿の、純奈が一人。
俺は一歩を踏み出す。
「駄目、嫌だよ!!修っち!!」
手を繋いできた友香がそこにいた。
「離せ。純奈に謝りたいんだ」


