その瞬間、俺達はモノクロの世界にいるかのようなシビアな空気を、放っていたのかもしれない。
だって、色とりどりに見えていた海、緑、お客さんの色とりどりの水着も、意味をなさないくらいにモノトーンだったから。
暫く見つめ合った後、零が笑う、
それはとても乾いた、注ぐ笑うような、そんな哀れな目で。
「修先生って、やっぱり恋愛のこととなると、ちょっとバカだね」
水を持っていたコップが、力む。
それは、俺がただ単に怒っているだけなのか、純奈の事を何も知らない事への嫉妬なのかはさておき。
「純奈が答えてくれないから、こうして君に聞いてるんだよ?」
「……それはーーーどうゆうことだ?別に、俺はあいつに何か特別な事をしてない。教師としての義務を果たしただけだ」
「「このネックレスを持ってろ。そしたら、俺が助ける」的な事を言ってもかい?」
知ってるんじゃないか。
「嫉妬してるのか?」
「それもそうだけど、純奈に「どうしてそこまで僕を信じてくれないんだ」って問い詰めたけど、その先を答えてくれないんだよ。聞いてはみたけど。だから修先生が何か仕組んだってしか、僕は思えなくてね」
こうして、尋問を取ってるってわけだ。
「教師っていう、生き物はなどんな生徒であろうと生徒を包み込むマザーテレサでなければならないんだ。俺がもし、純奈を依存させる言葉が、ネックレスを渡した際の言葉であったんなら謝る。でもな、仕方がなかったんだよ。家の事情で、あいつ……本当に苦しんでたし………」
零は黙った。
「なら、どうしてその「お守り」とやらに純奈はこだわるんだい?教師として、教えてくれたまえ」
暫くの沈黙の間、零が口を開く。
「……それは、多分だが……怖いんだと思う」
ーーー愛をもらおうとすると、誰が離れていくって言ってたっけ……あいつ。


