その指先には、光り輝く銀の指輪。
「零と結婚するのか?」
「まぁ……そうなるのかな。その前の、旅行的な」
どんな言葉をこぼせばいいのか、俺はわからなくなった。
俺はおめでとうというべきなのだが、何か頭に引っかかる。
記憶喪失、校長の挙動不審、そしてそれぞれの生徒が俺の元へやってくる、奇数な運命。
「そろそろ、部屋に戻らなきゃ。ごめんね修先生」
「え……あぁ」
純奈とすれ違う瞬間だった。
純奈のうなじに、目線を移す。
そこには俺があげた、シルバーの首飾り。
ーーどうして?
今度こそ、俺は「これはおかしい」と直感的に感じた。
いくらなんでも、気になる点が多すぎる。
零の事を好きではなかったのか?
純奈は俺への当てつけをしようとしてるのか?
そもそも、なぜ俺は研修を行かなくても処罰対象にならず、実家の手伝いの許可がおりてるんだ?
変な予感が、俺を包む。
だが何かをするわけもなく、やるべきことをするために仕事場へ戻る。
その疑問を抱えながら。
後に、大きな事件に発展する事も知らずに。
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