「私、いつもおかしくて………その、前の中学、小学校でも嫌われるんです。男子が私の噂をしていると、必ずと言っていいほどなぜか女子にガン無視される的な事が」
「怖いのか?今の学校が?」
「えぇ、かなり………というか、ちょっと吐きそうです……うっ………」
倒れそうになった彼女を、すかさず支える。
風が靡く。
一面に桜の香りが舞って、花弁が躍る。
目線はしっかりあってた。
まるでこの世界には、俺と純奈しかいないくらいに。
「わ………わぁ!?ご………ごめんなさい!!!!」
純奈は俺を突き飛ばして、離れた。
オロオロしている様子から、狙っているわけでもなさそうだ。
「………変な奴」
「へ?どうゆうことですか?」
「俺と一緒にいて、怖くないのか?」
「怖い?」
いや、怖いという表現はおかしいな。
なんと言えばいいのか………「恋愛対象として扱ってもらいたい」的な欲望などはこの純奈にはないのだろうか?
ぶっちゃけた話をすると、俺は同僚から引くほど3倍ものチョコレートを貰う時がある。
そして、友香みたいな女子生徒にものすごく難癖をつけられて何度も校長に呼び出しを食らっていた事だってあるのだ。
その少女たちの目は、「欲望」に満ちあふれていておぞましい。
近づいてくる少女たち全て、実際問題そんなものではないのかと、定義づけしていたのだがーーー。
「怖く……なんて、ないですよ?あの……あなたは、あなたのままです」
純粋で屈託のない笑みを浮かべ、俺にそう優しく問いかけた。
チャイムが鳴った。
「あ……そろそろ行きますね?」
ゆっくり呼吸を整えて、去っていく純奈という少女。
この瞬間に、「純粋な少女」に初めて出会ったのかもしれない。


