真っ赤な夕日が差し掛かる、海辺はマグマみたいに暑い。
それでも、砂浜を走る。
なぜ走っているのかは、俺にも理解しがたい。
でも、今は無性に走って会いたかった。
薫純奈ーーーそれは今までで、見たことがない特殊な生徒だった。
最初純奈を見かけたときは、2年前で1年生の頃から純奈を知っている。
春近い、入学式当日。
無事、入学式を終えてそれぞれの教室に戻っていき、皆緊張の面持ちをしている様子を捉えていた。
そこに、集団から抜け出すように駆け出した少女が一人。
あの頃だろうか。
そう、そうなのだ。
あの時から、何だか周りの人間とは違うオーラを放っていた。
優しくて、か弱い存在で、守ってあげたくなるような儚さが。
俺がやっと純奈を駆けつけた場所は、桜が舞う中庭だった。
その時の彼女は、息を呑むほど美しかった。
甘栗色のストレートの髪が、太陽の光を優しく反射して川のさざ波のように瞬いて、こちらを振り返る。
パッチリした二重に、全てを映し出すかのような透明な瞳が俺の姿形を捉えていた。
鼻筋も通っていて、ほんのり桜色した唇や、頬は、美人そのもの。
「大丈夫か?」
何か話さなければいけないと、悩んだあげくそれしか言えない。
「………え?あぁ……ちょっとだめっていうか………ごめんなさい!!迷惑でしたよね!!」
「え?」
あまりの突然の謝罪に、困惑。
「わ………私なんかいるから、なんとなーく皆笑顔じゃないし、私それで距離を置こうってこうして外に出たら………また心配させてしまって………ほっんとうにごめんなさい!!」
ものすごい勢いで、土下座され身が引ける。
「あの……えっと……なんつーか……皆があんまり喋らないのは、学校初日で友達も少ないからだと思うぞ?それに、俺がついてきたのは、ただのお節介だしお前から受け取った苦痛からやってるんじゃないんだ」
「……そ、そうなんですかね?明らかに、私を見てヒソヒソ話をしている、男子がいてうっかりそうなんじゃないかって………」
あぁ……美人特有にある、迷惑系男子に絡まれてから故の被害妄想ってやつなのか。


