「だけど……悲劇は繰り返されたってわけ?」
「友香くんは、勘が鋭いな。そのとおりだよ………皮肉だね……」
ずっと誹謗中傷の対応をしてきた学校側と、教育委員会だったけど教育委員会側が疑問に思い始めてきたんだ。
ーーーこの事実を知らない純奈先輩が、事実を知ったら苦しむんじゃないかって。
「「生徒にトラウマを与えてしまう教師を、そのまま採用してしまうっていうのは、人道的にどうなのか」という話になってしまったんだ」
重苦しい空気が、職員室内に漂う。
「でも、ちょっと、待てよ!!修先生は何も悪い事してねぇーじゃん!!ただ不慮の事故だって事だけで、何でそんなふうに修先生が悪いみたいに言われなきゃなんねーの?」
「我々教育に携わる仕事をしていると、一般常識からズレてるところがあるんだな。これが。教育委員会っていうのは………正直、「生徒と先生」っていう絶対的な関係を崇拝しているようなもんだから………外の常識っていうのが入りづらいんだと思う。だから………圧力がかかった」
「その圧力というのは?我が想像しているものか?」
「そうかもしれないね。「修先生を何とかして、合理的に辞めさせてほしい」って圧力が長期的にかかったんだ」
それを、校長先生は鵜呑みにしたっていうの?
バンッと机を叩いて、校長を睨む。
「そんな事、どうして承諾したのよっ!!」
「どうしてって………上からの命令は絶対だし………権力を持っている相手に逆らえないよ………だって、この学校を潰したくないんだから……」
「それは………そうだけど……。俺まだ疑問だぞ?それだったら、何で修先生がわざわざ研修休んで、海の家で手伝わされてんだ?繋がらなくねぇーか?どうしてそこで、実家が関係してるんだ?そもそも、純奈先輩が、この海の家で鉢合わせる計算だったって考えにくいだろ?花子さんもだ」
校長は口を開かない。
だが、それは破かれることになる。
「そういえば………やっぱりおかしいと思っんだ。僕のコンサートが中止になったの、みんな知ってたかい?」
皆は一斉に、零先輩の方へ向く。
「純奈とあの数日前、帰ってきた時だよ。丁度そこではロンドンのコンサールホールに泊まり込んで、純奈と色んな場所に観光がてら回り込もうと計画しようとしていたんだ。コンサートしながらね。だけどね、大物バイオリニストに予定を潰されちゃって………手伝う羽目になったんだよね……バイオリニストの」
「それで………どうなったっていうのかい?零青年?」
「そのバイオリニストが、口々に零したんだ。「日本の教育委員会には野蛮なやつがいたりするのかい?」って。その時なんのことがわかんなかったんだけどーーーたぶん、僕に海の家「クローバー」に行かされる様な圧力がかかってたんだと思う………」
「それって、純奈先輩は零先輩と近いからっていう理由でって事か?」
「たぶん……零先輩は学校時代色々高校でコンサートしてたから……、その集まってきた教育委員会の人と音楽家の人が連絡しあってーーー周りを固めて純奈先輩と修っちを引き離して、修っちを辞めさせるような壮大な計画をたっていいたいの?」
「たぶんそういう事だと思う。僕はね」
「そこに、修青年の実家である「クローバー」を主題としてーーー修青年を辞めさせるような強い「きっかけ」を作り出そうとしたわけだな。なんだか頭が痛い」
冷や汗が大量に噴き出ている校長。
「純奈先輩とその他諸々の人達をクローバーに集めて、強い「きっかけ」を作るってやっぱり先生としておかしいよ!!なんてことしてくれるの!?修っちは何も悪い事をしてないのに!!」
「ごめんなさい………でも、こうやるしかなかったんだ」
「この学校の名誉と、信頼の為だろ?サイテーだ!!」
その後何とかして、問い詰めたけれど全然取り下げてくれなかった。
だから私達は、降参するしかなくって泣き寝入り状態。
修っちがいない新学期が始まるなんて、悪夢を見てるようだ。
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