そこで、懲戒免除を下そうと当時の教育委員会は思ったのだがーーー修っちはわざと轢き殺してしまったわけじゃない。
横断歩道が赤信号だったことにもかかわらず、渡ってきた純奈先輩のご両親が悪かったのだ。
安全運転で修っちがどんだけ通常運転していたとしても、結局は車だ。
修っちはハンドルを切って、ブレーキを踏み込んだんだけどーーー純奈先輩のご両親を巻き込んで、反対側のガードレールの池に落っこちた。
ーーーその時に純奈先輩のご両親はーー首の骨を折って亡くなった。
その後、修っちも事故の後遺症で記憶障害を患ってしまった。
それでも悲劇は続いてーーー実の娘を失った花子さんと、純奈先輩の父親である遺族と裁判に巻き込まれちゃったみたい。
「そして裁判の結果は、無罪で修先生は罪を犯したわけじゃないって事で懲役免除は免れた。記憶障害って言っても、過去の出来事を忘れてるだけで、「何もかも」忘れたわけじゃない。自分の担当教科の知識は残ってたから、仕事は出来るって状態だった。皮肉なことにね。でもーーー悲劇はまた十数年年越しに起こってしまった………」
記憶がなくても、徐々に教師として悲劇を昇華しようとできていた時。
何と、その被害者である純奈先輩がこの高校にやって来てしまったんだ。
「まさか純奈ちゃんのご両親も、この高校に修先生がいることなんて把握できなかったんだろうね………。僕達も、突然の出来事で処置が遅れてーーー職員異動っていう配慮が出来なかったのを、悔いてる。純奈ちゃんのおばあちゃん、花子さんも転校も何度も考えたみたいなんだけど………親戚との折り合いが上手くいかなくて、それに修学旅行時期に、体を壊してしまってーーー上手くこの場を離れることができなかったんだ。それに、担当がーー」
運悪く修っちって事になったわけだ………。
「その時には、配慮しようと修先生に断りを入れたんだけど………断固として修先生は辞めようとしなかったし………困ったよ」
「……ねぇ、それでその話と、教育委員会が同関係があるんですか?修っちにどんな圧力が?」
「その一緒にいる状況を、バックグラウンドを知ってちょっかいを入れてくる厄介な奴らがいたんだ。生徒にも、保護者にも、先生にも。そこで、教育委員会に通報した嫌味な奴と八合わせる事になってね。そこでこの学校と教育委員会は警戒みたいな形で繋がるようになってしまった」


