始業式が終わり、案内された1Aの教室は、理解していたが男子生徒ばかりだった。

まぁ、どこに行ってもそうだが。

ここがヤンキー高校だと知らずに転入してきた馬鹿な女子生徒の噂は、あっという間に校内を駆け巡り、今目の前にいるクラスメイトたちは、好奇の目で私を見ている。

西虎高校唯一の女子生徒。

そんな称号、望んで無いのに。

「初めまして。転入ました宮峰(みやみね)翼です。」

挨拶を済ますと、私は無言で指定された席についた。

その態度に、クラスメイトが湧く。

「クールだねぇ」

「普通に可愛くね!?」

「翼ちゃんかぁ……」

至る所から聞こえてくる声が耳障りだ。

そのままホームルームとなり、二学期初日の今日は、午前中で下校となった。

さっさと帰ってしまおう。

そう思い立ち上がったが、クラスメイトのヤンキー数人に囲まれて、行く手を塞がれた。

「ねぇ、翼ちゃん……俺らとこのあと遊び行かね?」

ヤンキーのひとりが口を開く。

威圧感のある大きな身体にワックスで固めた髪の毛。

おそらくこのクラスのリーダー格であろうその生徒は、ニヤニヤとした表情で、私の体を上から下まで舐めまわすように見つめてきた。

その視線と、わざとらしい声が、気持ち悪くてたまらない。

「……帰りたいので」

無視して突っ切ろうと一歩踏み出したが、上手くは行かなかった。

「強気だね。うん、そうゆうのも良いよ」

「っ!」

無理やりに腕を掴まれて、逃げようにも力が敵わない。

「離して……!」

叫んでも聞き入れて貰えず、私はそのまま引っ張られるようにして教室を連れ出された。

視界の隅に、何も言えずにうずくまる一般生徒数人と、何故か私を真っ直ぐ見つめる、青い髪の生徒が映った。

「そんなに怖がんなよ」

連れてこられたのは、別の校舎の空き教室。

ガチャリと鍵を閉める音に、全身がびくりと震える。

腕を離され、そのまま床に倒れ込んだ私の視界に映るのは、私をここに連れてきたヤンキーと仲間2人。

「楽しいことするだけだから」

「あ、あぁ……」

恐怖で震える私を他所に、ヤンキー3人は楽しそうに話している。

私でどう遊ぶかを、話している……。

なんで、転校初日でこんなにことになっているのだろう。

ヤンキー高校だと知っていたら、絶対来なかったのに。

「や、やだ……」

バァンッ!!

「!?」

私の体にヤンキーの手が伸びたと同時、ものすごい音と共に埃が舞った。

「な、んで……」

何事かと振り返ったヤンキー達3人が、急に青ざめた顔となる。

音の正体は、教室のドアが倒れたことによるもので、その奥、廊下には男子生徒が4人いた。

そのうち1人は見覚えがる。

先程、連れ去られる私を見ていた青髪のクラスメイト。

「何してんの」

低く、冷徹な声にびくりと体が震える。

言葉を発したのは、青髪の隣に立つ赤髪の男子生徒。

冷ややかな目が一瞬だけ私を見た後、ヤンキー達を威圧する。

「説明、してくれるよね?」

赤髪の男子生徒はにこりと微笑んだが、目は全く笑っていなかった。