そこからはとても早かった。
現実を受け入れられない私を置いて、時間は何も変わらず進んでいく。
大型トラクターの転倒。
歩道を歩いていた私の母は、為す術なく潰された。
即死だったらしい。
警察や、救急の方、搬送先の病院の方々との会話は覚えていないが、誰もが苦しそうな顔をしていた。
誰もが唯一の家族だった母親を亡くした、高校生の女の子を可哀想に感じていたというのは、言われずとも伝わってくる。
葬儀はひっそりと行われ、数える程もいない親戚のよく分からない話し合いの末、私は幼少期に離婚した父親に引き取られることになった。
父の家に引っ越すにあたり、今通っている高校から、父の地元の高校へと転校することになり、抜け殻のようなまま、私は家の荷物を片付けた。
そのまま夏休みは終わりに近づき、「切り替えろ」という父の冷たい一言で、私は無理やりに自我を取り戻した。
新しい家は立派なマンションの一室で、正直に言うと、母と2人の時よりも贅沢な暮らしが望めた。
自分のことは自分でするという条件の元、月10万のお小遣いを渡して父は毎晩どこかへ消えていく。
自分の父親ながら、職業は不明。
それでも、血の繋がりはあれど、これまで関わってこなかった父親と顔を合わせるよりは、ほって置かれる方が心境的にも楽だった。
夏休みが終わり、始業式の日。
父は既に話を通してあるからと、学校の制服と必要書類を置いて、早くから家を出て行った。
私立西虎高校。
今日から通う学校の制服は、前に通っていた高校よりも可愛かった。
黒いワンピーススタイルに赤いリボンが栄える。
用意が終わると、私は地図アプリに高校の名前を入力する。
電車で4駅先のその高校は、大して遠くは無かった。
アプリに従い家を出て、電車に乗ると、やけに視線が多いことに気がつく。
顔を上げると、向かいにいた別の高校の制服を着た生徒が、びくりと肩を震わせて視線を逸らした。
少し不愉快だと感じたが、よく周りを見ると、皆が私を少し避けているように感じる。
普段見ない生徒が急に現れたからだろうか?
不思議に思いながらも、指定の駅で降りて高校に向かう。
高校に近づくにつれ、違和感の招待を理解した。
同じ校章のついた制服を纏う男子生徒は、髪が明るく、制服を着崩した人達が多い。
柄も悪そうで、先程から嫌な目で私を見てくる。
まさかと思いながら歩調を早め、高校に入るなり校長室へと突っ込む。
「本日よりこちらの高校に通わさしていただきます。
あ……宮峰翼です。」
宮峰は父の苗字。
私が挨拶をするなり、白髪の校長は、疲れた顔でにこりと笑った。
「校長の山根です。転校生……そうか。唯一の女子の……」
「え?」
待って、今、なんて言った?
「共学なんだけど、女子はなかなか入学してこなくてね……これも全て、ヤンキー高校なんて呼ばれてるから」
ため息混じりのその声に、言葉を失う。
……ここが、ヤンキー高校なんて聞いてない!
現実を受け入れられない私を置いて、時間は何も変わらず進んでいく。
大型トラクターの転倒。
歩道を歩いていた私の母は、為す術なく潰された。
即死だったらしい。
警察や、救急の方、搬送先の病院の方々との会話は覚えていないが、誰もが苦しそうな顔をしていた。
誰もが唯一の家族だった母親を亡くした、高校生の女の子を可哀想に感じていたというのは、言われずとも伝わってくる。
葬儀はひっそりと行われ、数える程もいない親戚のよく分からない話し合いの末、私は幼少期に離婚した父親に引き取られることになった。
父の家に引っ越すにあたり、今通っている高校から、父の地元の高校へと転校することになり、抜け殻のようなまま、私は家の荷物を片付けた。
そのまま夏休みは終わりに近づき、「切り替えろ」という父の冷たい一言で、私は無理やりに自我を取り戻した。
新しい家は立派なマンションの一室で、正直に言うと、母と2人の時よりも贅沢な暮らしが望めた。
自分のことは自分でするという条件の元、月10万のお小遣いを渡して父は毎晩どこかへ消えていく。
自分の父親ながら、職業は不明。
それでも、血の繋がりはあれど、これまで関わってこなかった父親と顔を合わせるよりは、ほって置かれる方が心境的にも楽だった。
夏休みが終わり、始業式の日。
父は既に話を通してあるからと、学校の制服と必要書類を置いて、早くから家を出て行った。
私立西虎高校。
今日から通う学校の制服は、前に通っていた高校よりも可愛かった。
黒いワンピーススタイルに赤いリボンが栄える。
用意が終わると、私は地図アプリに高校の名前を入力する。
電車で4駅先のその高校は、大して遠くは無かった。
アプリに従い家を出て、電車に乗ると、やけに視線が多いことに気がつく。
顔を上げると、向かいにいた別の高校の制服を着た生徒が、びくりと肩を震わせて視線を逸らした。
少し不愉快だと感じたが、よく周りを見ると、皆が私を少し避けているように感じる。
普段見ない生徒が急に現れたからだろうか?
不思議に思いながらも、指定の駅で降りて高校に向かう。
高校に近づくにつれ、違和感の招待を理解した。
同じ校章のついた制服を纏う男子生徒は、髪が明るく、制服を着崩した人達が多い。
柄も悪そうで、先程から嫌な目で私を見てくる。
まさかと思いながら歩調を早め、高校に入るなり校長室へと突っ込む。
「本日よりこちらの高校に通わさしていただきます。
あ……宮峰翼です。」
宮峰は父の苗字。
私が挨拶をするなり、白髪の校長は、疲れた顔でにこりと笑った。
「校長の山根です。転校生……そうか。唯一の女子の……」
「え?」
待って、今、なんて言った?
「共学なんだけど、女子はなかなか入学してこなくてね……これも全て、ヤンキー高校なんて呼ばれてるから」
ため息混じりのその声に、言葉を失う。
……ここが、ヤンキー高校なんて聞いてない!
