時刻は午後の二時過ぎ。三時からの午後の診察前のひとときを邪魔してはいけない。咄嗟に足を止め、そっと扉を閉めようとしたが、守山に気づかれてしまったらしい。
「ああ、沙月さん」
「すみません、休憩の邪魔しちゃいましたね」
「いえいえ、どうぞ。僕はもうそろそろ戻らなきゃいけませんから」
遠慮しつつ、少し離れた隣に立ち、沙月もバルコニーに手を掛けた。
目の前には中庭の木があり、紅葉を始めている。
十月も下旬となると日によっては肌寒いが、天気がいいので吹き抜ける風は気持ちよかった。
「あ、そうそう。守山先生、さっきMRに聞いたんですが、新薬の――」
ちょうどよかったので、守山が本当に新薬に興味を持っているのか聞いてみた。
MRの話は半分当たっていて半分は外れていた。守山が講演会に行くのは本当だが、そこまで期待しているわけではないようだ。
「僕は新薬については慎重派なので。ですが、情報収集は必要ですからね」



