私たち、幸せに離婚しましょう~クールな脳外科医の激愛は契約妻を逃がさない~

 父が元気だったころは沙月が一緒に参加したり、あるいは代わりに参加していたが、華子が理事長代理になってから、滅多に誘われなくなった。それに、誘われたときにはほぼ必ず布施がいたので、以来誘われても断っている。

 だが、薄羽の経営を担うならそうも言っていられない。自分の目や耳で直接見聞きしておかなければ、要望があったときに困ってしまう。

 今日の今日とは急な話ではあるが、予定はない。参加はできそうだ。

(でも、主真さんの夕ご飯が……)

 後ろ髪を引かれる思いがした。

 だが、こんなとき予定を優先したほうが、彼も気が楽だろう。近づきすぎるのは、甘い毒を飲むようなものだと思い直した。

「わかりました。伺います」

「よかったー。お待ちしてますね」

 ほくほく顔のMRから受け取ったパンフレットとチラシを手に、沙月は小さく息を吐きバルコニーに向かった。

 

(あ、守山先生)

 扉を開けるとバルコニーには先客がいた。

 守山は紙コップを手に、バルコニーの手すりに肘をかけている。