私たち、幸せに離婚しましょう~クールな脳外科医の激愛は契約妻を逃がさない~

 途方に暮れる思いで溜め息を落とし、自販機で甘いミルクティーを買う――。

「沙月さん?」

 ハッとして振り返るとMR、すなわち製薬会社の営業である女性がひょっこりと沙月を覗き込んだ。

「どうかなさいました?」

「あ、いえいえ」

 ぼんやりしていて、自販機のミルクティーができあがっていたのに気づかなかった。

 慌ててカップを取り出す。

「ちょうどよかった」

 飛んで火に入る夏の虫とばかりに、彼女は営業を始める。

「新薬ですか」

 新薬の発表を兼ねた講演会があるという。

「ええ。お話だけでも聞きにきていただけませんか? 守山先生とか脳神経内科の先生方も興味を示して、来てくださるんですよ」

「守山先生が?」

「はいはい。お席に余裕はありますから大丈夫です。是非」

 MRは大きくうなずく。

 脳神経内科医が興味を示したのが本当なら、参加すべきかもしれない。MRの必死のお願いに苦笑しつつ、沙月は考えた。

 最近、この手の講演会は華子が参加している。